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ヲタ王子SSを久々に更新します。
『ヲタ王子in夏の祭典その4』
とうとう大志に死亡フラグが…(笑)

『続・選択授業』と『おまけ・選択授業』にブログ拍手下さった方ありがとうございます☆

そしてweb拍手、WCRアイコンを押して下さった方もありがとうございました!


付き合ってくださるお客様はread moreよりどうぞ。
ヲタ王子in夏の祭典 その4


「ここがウチのスペースよ。」

建物内、東西に分かれた会場を東に入り壁際、外に繋がるドアの側。
長机1つ分が百合子さんの同人誌を販売する場所らしい。
机の傍らには段ボールが10箱ほど山積みにされている。

外の賑わい様に反してだだっ広い室内は嘘みたいに閑散としている。

「へぇ、広いっすね…。」

「今はね。開場時間になったら酷く窮屈に感じるわよ。
通路で擦れ違えないくらい。」

俺は先程目の当たりにした建物を取り巻く人波を思い浮かべた。
まぁ、確かにあれだけの人が入るなら無理もないかもしれない。

「さっきから気になっていたんだが…」

と、急に土板橋が俺の爪先から頭の天辺までを
検分するようにしげしげと眺めはじめた。

今度はなんだ…?

次の瞬間、

「制服のシャツはしまわないで出す!!」

そう言って、俺の腰の辺りを掴むと一気にワイシャツの裾を引っ張り出した。

「わひゃあっ…!?」

予想だにしなかった出来事に全身に鳥肌が立つ。
余りのこそばゆさに思わず変な叫び声を上げてしまった。

風紀的に言えば普通逆だろう!?

…じゃなくてっ

「なっ…にしやがるっ!!」

こいつのやることはいつも突拍子がないのでとても理解に及ばない。
及ばなすぎて、自分のツッコミがまるで明後日の方向へ飛んで行ったのが見えた。
周りで準備していた人達もびっくりしたようにこちらを凝視している。
し、視線が痛いぞ…。

百合子さんはと、言うと…

あぁ、笑っていらっしゃる…。
それはもう清々しいくらい高らかに。

俺は段ボールを確認するふりをして机の端に屈み込んだ。
血流が一気に顔へ上って、さぞかし茹でダコ状態だろう。
全身が熱い。

だというのに、当の土板橋はどこ吹く風の仁王立ち。
少しも動揺していない。
むしろ、自分が正しいと言わんばかりの威風堂々さ。
こっちは身に余る羞恥心だ、馬鹿野郎!!

「さぁてっ、準備進めましょうか。」

百合子さんは呼吸を整えると、段ボールに手を掛けた。
俺はしゃがんだまま、ひとつ疑問をぶつけてみた。

「そういえば、なんで制服で集合だったんですか?
働くなら私服の方が効率良い気がするのに…。」

「ふふふ、今度の新刊が古キョン本だからよ。」

こきょん…?

百合子さんが開封間もない段ボール箱から取り出したる一冊の本。
その表紙に描かれたキャラクターを見て、
なぜに自分が今制服を着ていて、且つシャツを外に出さなきゃいけないのか。

更には、当初から抱いていた土板橋への違和感の正体にやっと気がついた。

そうか、髪の分け目が逆なんだ…。
野郎のそんな機微に気が付いてしまう敏感な自分に
かなりの自己嫌悪に陥ったことは言うまでもない。


それから百合子さんは俺達2人にテキパキと指示を出した。

スタンドにのぼりの様にポスターを立て、机に本を積む。
ふーん、4種類か。
さすが、プロ並に絵がお上手だ。
それらの表紙全てにことごとく男同士のイチャつく様が
描かれていることはこの際スルーしておく。

例え、そのキャラクターの着ている制服がそこはかとなくうちの制服に似ていて、
そしてそこはかとなくキャラクターの面差しが誰かを思わせようと
俺は全力でスルーする…っ!

「売れた分はこの紙にチェック付けて。お釣はここ。
買ってくれた人にはおまけでこのポストカード付けてあげてね。
実は、今日もう一人手伝ってくれる子がいるはずだったんだけど、
風邪引いちゃっって。
症状は大したことないらしいんだけど、
…オタフク風邪ですって。嘆いてたわ~。」


オタフク風邪というのは無条件に哀れみを受ける病である。
お気の毒に…例え症状が軽くとも、オカメの様に下ぶくれた顔では
どうやってもみっともなくて外には出られまい。

意外にも出店準備はものの15分であっさり終わった。
そんな広いスペースでもないし、3人でかかればこんなものか。

「では俺は企業ブースにいる徹夜組を労ってくる。」

パイプ椅子に優雅に腰を落ち着けていた土板橋が立ち上がる。

「徹夜って…朝6時以前から並ぶのは禁止されてるって言ってなかったか?」

「その通りだ。禁止されている。"並んで"待つことはな。」

土板橋は不敵な笑みを浮かべた…ような気がした。
何ぶん、いつだって感情を表には出さない奴であるからして。

開場するまで結構長い時間があったので、俺は百合子さんとのんびり世間話をしていた。

「土板橋って昔からあぁなんすか。」

「そうね、3歳くらいから私と一緒にナデシコ見て、
ルリルリ派かユリカ派かで喧嘩してたわ。
中学生と幼稚園児がよ?
アンパンマンとかは見なかったわね。
特撮は普通に好きだったけど。」

「ナデ…?ルリルリ?」

「そっか、大志くんは知らないか。
そうよね~、いやぁジェネレーションギャップ。
平成生まれだもんね。」

「はぁ。」

そんな…多分他愛もない会話をして、気が付くと開場10分前になっていた。
急に百合子さんがそわそわしだした。

「どうしたんですか?」

「実はすっごい好きなサイトさんが数量限定でフィギュアも売るらしいんだけど…。」

「このイベントって売るの本だけじゃないんすか?」

「企業ブース以外は大体同人誌なんだけど、
たまに違うもの置くところもあるの。
そこのサイトさんも本がメインなんだけど、
手先の器用な方で作ってみたんだって。
ただ時間もないから大量生産は出来なかったらしいけど、
ついでに出品するって。日記に写真が上がってて…あの美麗ココナツ…。」

今度は豊満な胸の前で両手を組みうっとりした表情をしだしたぞ。
ココナッツが美麗とかよく分からんけど、よほど欲しいんだろう。

「でも、開場してすぐ売れちゃうんだろうな。仕方ないわ。ここから少しブース遠いし。」

百合子さんは諦めたように肩を落とす。
そんな、しょんぼりしないで下さいよ。
百合子さんにそんな顔は似合いません。

俺は思わず口走ってしまった。

「俺、留守番してましょうか?2人が戻って来るまで。」

「え。でも…」

「その、ココ…何でしたっけ?欲しいんですよね、百合子さん。
本の売り方はさっき教えてもらったし、何とかなるでしょう。」

心配気に眉根を寄せる百合子さんだが、
明らかにその下の瞳に光が灯るのが分かった。

そろそろ開場時間だ。俄かに周囲の空気が色めき立つ。

「さ、百合子さん早くっ。」

「じゃ、じゃあ行って来るわ!多分恭介もすぐ戻って来るだろうから
それまで頑張ってっ!!ありがとう、大志くんっ。」

小走りで百合子さんは出て行った。
これで良かったんだよな。

しかし、その親切心が悪夢を呼ぶことになろうとは、
この時の俺は微塵も思っていなかった。


その5へ続く→

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